大判例

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名古屋家庭裁判所 事件番号不明 判決

本籍 名古屋市中川区西日置町八丁目四十五番地

住居 同市中区若松町八番地の一

旅館業 大野登美子 大正二年六月十二日生

主文

被告人を懲役六月に処する。

但し本裁判確定の日より弍年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(事実)

被告人は名古屋市中区若松町八番地の一において「歌舞伎ホテル」なる屋号で酒場兼売淫宿を営んでいたものであるが

第一、昭和二十九年八月中旬頃より同三十年一月中旬頃に至る間百数回にわたり「右歌舞伎ホテル」において旅館女中として雇入れた児童たる○井○苗(昭和十三年四月三十日生)をしてその年令を確認する措置をとることなく多数の米兵を相手に対価を得て淫行させ

第二  昭和二十九年八月下旬頃より同年十月十五日頃までの間及び昭和三十年二月上旬頃より同年三月上旬頃までの間二十数回にわたり前記歌舞伎ホテルで旅館女中として雇入れた児童たる○石○子(昭和十二年十月六日生)をしてその年令を確認する措置をとることなく多数の米兵を相手に対価を得て淫行させたものである。

(証拠の標目)

一、証人○井○苗の当公廷における供述

一、○井○苗の検察官及び司法警察員第一、二回に対する供述調書

一、○石○子の検察官及び司法警察員に対する供述調書

一、愛知県葉栗郡木曽川町長作成の○井○苗及び○石○子の戸籍謄本各一通

一、押収にかかる手帳三册(証第一号)貸金表控十五通(証第二号)入金伝票二十通(証第三号)手帳二册(証第四号)

一、被告人の当公廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

(被告人及び弁護人の主張に対する判断)

(1)  被告人及び弁護人は○井○苗及び○石○子に売春を強制した覚えはない旨主張するが児童福祉法第三十四条第一項第六号にいわゆる「児童に淫行をさせる行為」とは淫行を強制する行為のみでなく淫行を助成し或は淫行の原因を与えるものと認められる場合も包含すると解すべきであるから淫行を強制しなくても右罪責を免れることはできない。よつて右主張は採用しない。

(2)  弁護人は被告人の判示第一の所為は○井○苗より二十才で子供もあるといわれてこれを信じて同女を雇入れたものであつてたとえ戸籍謄本を取寄せなくても子供の写真をみれば十八才以上であると信ずるのが社会通念であり判示第二の○石○子についても同女が二十才であるといつたのを信じたのであるから被告人にはなんら過失はない旨主張するが十五才前後で子供を産むことも生理上可能であるから被告人が○井○苗に子供があるということだけで同女が二十才以上であると信じたのは軽卒でありしかも被告人が右○井○苗及び○石○子の戸籍謄本或は米の配給通帳を取寄せ調査する等両名の年令を確認する措置をとらなかつたことは被告人の認めるところであるから被告人が右○井○苗及び○石○子の十八才未満であることを知らなかつたとしてもこれを知らなかつたことに過失がなかつたものということはできない。よつて弁護人の右主張は採用しない。

(法律の適用)

法律に照らすと被告人の判示各所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項第三項に該当するところ以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから各所定刑中懲役刑を選択し犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処しなお諸般の情状よりみて刑の執行を猶予するを相当と認め本裁判確定の日より弍年間右刑の執行を猶予することとし訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項に則り被告人をして負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 黒木美朝)

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